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報告期日迫る!米国企業透明化法対応の新たなガイダンス:解散した法人の報告義務およびペナルティについて

by | Oct 23, 2024 | Articles

ハワイ州弁護士 佐渡山美紀

October 23, 2024

前回の米国企業透明化法(Corporate Transparency Act)(以下、「CTA」)のブログでは、CTAの合憲性を問う訴訟案件の発生により、実質的支配者情報・実質的所有者情報(以下、「BOI」)の報告義務に影響がある可能性を指摘しましたが、その後、特に訴訟による影響はなく、CTA施行時(202411日)に、既に存在していた米国設立法人、米国州にて登記されている外国法人の米国財務省金融犯罪捜査網(Department of Treasury’s Financial Crimes Enforcement Network)(以下、「FINCEN」)に対するBOIの報告期日(202511日)が迫ってきました 

 その中で、今回は、「解散」(Dissolved)した米国法人および「撤回」(Withdraw)した外国法人に関する報告義務の有無について解説します。この内容は、20249月以降に新たに発行されたFINCENガイダンスに基づいています。 

(1) CTAにおける「解散」(Dissolution)、「撤回」(Withdrawal)の定義

FINCENによれば、該当州の法律に沿って、登記当局に対し、解散に必要な書類を提出し(ハワイ州の場合、Corporation「FORM DC-13」、LLC「FORM LLC-11」)、当局の押印を受け、事業を停止し、全資産を現金化し、納税・債務弁済し、残余財産の分配をし、銀行口座等を解約し、最終税務申告をすれば、「解散」したとみなされます。「解散」は、正式かつ取り消し不可能である必要があり、上記一連のプロセスの途中であれば、「解散」したことにはなりません
外国法人として登記された法人が、その登記を撤回」(Withdraw)する場合も、上記と同様、単に必要書類ハワイ州の場合、Corporation「FORM FC-4」、LLC「FORM FLLC-2」)を登記当局に提出して押印を受けるだけでなく管轄州においての事業を停止し、納税・債務弁済し、最終確定申告をするなど、一連のプロセスを完結していないと、正式かつ取り消し不可の「撤回」であると見做されません。

(2) 登記当局による強制事業停止・強制解散は「解散」ではない

事業を特に行わず、登記当局に対する支払い義務、報告義務(年次更新、解散書類の提出を怠り、登記当局に強制的に事業停止、解散させられたとしても、実際、解散・撤回の一連のプロセスを実行し完結していなければCTAにおける「解散」あるいは「撤回」には該当しません。つまり、強制事業停止・強制解散・撤回という状況にあり、そのまま放置されている法人は、BOI報告義務がるということです。 

(3) 2023年12月31日以前に解散・撤回した法人

上記定義をベースに、20231231日までに解散した米国法人、あるいは撤回した外国法人は、202411日時点で存在しない法人という扱いとなるので、そもそも報告対象会社に該当せず、報告義務はありません。

(4) 2024年1月1日以降に解散手続き・撤回手続きを開始した法人、および解散・撤回した法人

他方、202411日以降に解散手続き・撤回手続きを開始した法人、および2024年中に解散・撤回した法人は、報告対象会社という扱いで、BOIの報告義務があります。この場合に該当する実質的支配者・実質的所有者について、現時点で、FINCENはガイダンスを発行しておりませんが、保守的な観点から、当時解散・撤回決定時の実質的支配者・実質的所有者について報告することをお勧めします。
なお、一度報告を行えば、解散後・撤回後は、その情報更新等のために再度FINCENに報告する必要はありません。

(5) 報告義務を怠った場合のペナルティ

報告義務があることを知っていながら、敢えてBOI報告期日までに報告をしなかった場合(「willful failure to report or willfully causing a company not to file」)、報告対象会社は、以下のペナルティの対象となる可能性があります

  • 民事罰:現時点で、インフレも考慮し$591/
  • 刑事罰:$10,000を上限とする罰金、および/または最長2年間の懲役

実際、どのような形やタイミングで当該ペナルティが請求されるかは、まだ公表されていないので、現時点では不明ですが、今後、発生し得るペナルティを回避するためにも、期日(202511日)までに、報告を済ませることをお勧めします。

 

October 2024

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