ハワイ州弁護士 栗原幸花
October 24, 2022
米国市民からの暴力やDVと別れたらグリーンカードの条件解除に影響する?
アメリカ市民との結婚を通してグリーンカードを取得された場合の、よくあるご質問について回答します。
Q)結婚によりグリーンカードを取得しましたが、アメリカ人の配偶者から暴力やモラハラを受けており、離婚を考えています。アメリカ市民の子どももいるため、離婚後もアメリカに残りたいと思っていますが、まだ条件付きの2年限定のグリーンカードなので、離婚することにより私のグリーンカードは喪失してしまいますか?
通常、アメリカ市民との結婚をベースにグリーンカード(永住権)を取得した場合、グリーンカードが無効となる90日前から、条件削除の請願(Removal of Condition)を行う必要があります。この請願書には、夫婦であるアメリカ市民と外国人お二人の署名が必要となります。しかし、アメリカ市民よりDVを受けている外国人配偶者は、I-360という請願書により、お一人でグリーンカードの2年間限定条件を解除することが可能です。よって、離婚後もI-360の請願書によりグリーンカードの更新が可能ですし、アメリカに滞在し続けることもできます。
これは移民国籍法に基づいてアメリカ市民やグリーンカード保持者より虐待や暴力を受けている配偶者、親そして子供を守るための法律として定められています。よって、そういった虐待や暴力の被害者である外国人は、暴力的な配偶者に知られることなく、安全な方法で独立して請願することが可能となります。この法律は、アメリカ市民だけでなく、グリーンカード保持者の配偶者にも適用されます。
もしあなたやあなたの子どもが現在アメリカ市民やグリーンカード保持者の配偶者より暴力を受けている場合は、婚姻生活を我慢するのではなく、まずは身体の安全を確保されることをおすすめします。
I-360の請願を行うには、まずは誠実な結婚であったことを証明します。そして、配偶者からの暴力を証明できる証拠やご自身のステートメントが必要となります。例えば、暴力について警察へ連絡した際のポリスレポート、怪我の治療に関する病院の記録や、カウンセラーのステートメント、暴力による傷の写真などを提出します。よって、言葉の暴力のみのケースですと、厳しい審査をパスできない可能性が高くなります。
よって、もし今、配偶者によるDVやモラハラに悩んでいる方は、身体の危険を冒してまで、グリーンカード保持のためだけに婚姻を継続することはおすすめできません。それよりも、そういった事実を証明できるよう、なるべく警察に通報したり、病院で医師に傷を見てもらったり、証拠写真や日記など詳細な記録を残し、ご自分のみでグリーンカード更新手続きを取るステップを踏まれることをおすすめします。アメリカ国内で移民という弱い立場にあり、更にアメリカ市民やグリーンカード保持者である配偶者からDVを受けている外国人被害者を保護するための、こういった救済法が作られていますので、グリーンカードを喪失する恐れから危険な家庭で我慢する必要はありません。
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