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【2025年3月時点】米国企業透明化法に関するアップデート

by | Apr 3, 2025 | Articles

ハワイ州弁護士 佐渡山美紀

March 6, 2025
(更新日:April 3, 2025)

【追記|2025年4月2日時点】

2025年3月26日にFinCENが発表した仮最終規則(Interim Final Rule)により、以下のルールが即有効となります。

  • ハワイ州またはその他の州で設立された法人は、BOIRを行う必要はない。
  • 2025年3月26日以前にハワイ州もしくはその他の州で事業を行うために外国支店登記された日本企業は、2025年4月25日までにBOIRを行わなければならない。
  • 2025年3月26日以降にハワイ州もしくはその他の州で外国支店登記をする日本企業は、実際に事業登録がされた旨の通知を受けた日、または報告企業が事業登録された旨の公表を州財務長官または類似の官庁(ハワイ州ではDCCA)が最初に行った日のいずれか早い方から30日(暦日)以内にBOIRを行わなければならない。
  • 外国支店登記された日本企業、またはこれから外国支店登記をされる日本企業の実質的支配者・実質的所有者が米国人である場合、その米国人についてはBOIを提出する必要はない。つまり、当該日本企業の実質的支配者・実質的所有者が全員米国人である場合、BOIRを行う必要はない。

仮最終規則に関するFAQはこちら

なお、FinCENは、2025年5月27まで上記ルールに対するパブリックコメントを募集しており、その後、上記ルールが更に改定される可能性もありますが、現時点で、2025年4月25日の期日には影響ないので、該当する日本企業は、必ずそれまでにBOIRを完了することをお勧めします。

 

昨年12月から、2転3転している企業透明化法(CTA)に基づく報告義務の対応について、以下の通り整理しました。

A. 現況:
現時点で報告をしていなくても、罰則なし。

B.主な進展の概要:

  • 2024年12月3日:テキサス東部地区の連邦裁判所は、Texas Top Cop Shop, Inc., et al. v. Garland, et al.の事件について、全国範囲で、企業透明化法(CTA)の仮差し止め命令を下した。
  • 2024年12月5日:米国連邦司法省(Department of Justice)は、財務省(Department of the Treasury)に代わり、早速、連邦裁判所(5th Circuit)に控訴したが、FINCENは、当訴訟中、上記命令が有効である間は、CTA上の報告を義務付けないことを周知した。
  • 2025年12月26日:控訴先の連邦裁判所(5th Circuit)は、一旦、2025年12月23日付で政府の主張を認めたものの、その3日後に、これを取り消したため、仮差し止め命令は継続する結果となった。
  • 2025年1月23日:Texas Top Cop 事件に関する連邦裁判所(5th  Circuit)の命令に対し、米国連邦司法省が緊急申立てをしたところ、連邦最高裁判所は、Texas Top Cop 事件提訴中は、仮差し押さえ命令を停止させる命令を下した(つまり、仮差し押さえ命令は一旦解除)。
  • 2025年2月17:他方、テキサス東部地区の連邦裁判所は、別案件にて(Smith v. United States Department of the Treasury)、2025年1月7日に、全国範囲で企業透明化法(CTA)の仮差し止め命令を下していたが、上記の連邦最高裁判所の対応に基づき、2025年2月17日付で、Smith 事件提訴中は、仮差し押さえ命令を一時的に停止させる命令を下した。
  • 2025年2月18日:上記展開により、FINCENは、既存法人に対し、報告の新期日を2025年3月21日に設定した。
  • 2025年2月27日:FINCENは、方向転換し、(i)現在設定されている期日までに報告・情報更新を済ませていない法人に対し、罰則を科したり報告を義務付けたりせず、(ii)同じく仮最終規定が施行されるまで罰則を科したり報告を義務付けたりせず、(iii)2025年3月21日までに仮最終規定案を発表し、(iv)現在の報告要件の改正案について市民から意見募集をする意向であることを発表した。
  • 2025年3月2日:連邦財務省はプレスリリースにて(i)現在設定されている期日までに報告をしないことによって罰則は課されず、(ii)今後規定が改正されても、米国市民、米国法人およびこれらの実質的支配者・実質的所有者に対し罰則は課されず、(iii)米国で登記している外国法人のみに対し報告義務が発生するよう提案し、(iv)トランプ大統領及び財務長官が上記取り組みをサポートしていることをアナウンスした。

C. 弊所コメント:

  • 現在、複数の州で、企業透明化法(CTA)の正当性を問う訴訟が発生・継続しており、また、アメリカ連邦議会では、企業透明化法(CTA)の廃止、報告期日の延長等に関する法案が提出されています。その一方で、トランプ政権に変わり、政府側において、企業透明化法(CTA)を保護する動きも見られます。
  • もし、企業透明化法(CTA)が存続することとなった場合、今後の企業透明化法(CTA)のターゲットは、外国法人、及び外国市民の実質的支配者・実質的所有者となる可能性が高そうです。現在は、報告義務、罰則の適用は保留となっておりますが、外国法人として米国で事業をされ、実質的支配者・実質的所有者が日本市民であるお客様で、まだ報告を済まされていない方は、いつでも報告を進められるよう待機されておくことをお勧めします。

 

March 2025

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